2017年7月30日日曜日

早く逝って欲しい老人が皮肉にも長生きする話

これはお隣のことであるが・・・
うちの隣には、いつもキンキン声で自分の犬に怒鳴り声をあげている感じの悪いおばはんと、タクシーの運転手をやっているが、その職がなければ後はヤ●ザにでもなる他無いだろうなというような感じの旦那とその一人息子、それにその旦那の母親が4人で住んでいる。

この旦那の母親、もう87になるお婆さんだが、これが可哀想なくらいに息子夫婦から邪険に扱われている。
自分の息子からもその嫁からも、ひたすら露骨な邪魔者扱いである。
夜中でもうちまで響いてくる声で、なんやかんやと怒鳴られている。
特に嫁のほうが、そのキンキン声を張り上げて、ヒステリックにお婆さんを怒鳴っている声がよく聞こえる。

旦那のほうも自分の母親をフォローしてやるでもなく、一緒になって邪魔者扱いしているようだ。
ある晩には、留守番をしていたお婆さんが、窓を開けっ放しにしていたことに異常に腹を立てて、

「不用心だろ!!」「何考えてるんだ!!」「馬鹿か!!」

と、母親を怒鳴り罵っていた。
なぜそこまでと思うほど腹の虫はおさまらないようで、10分ほどずっと罵倒しつづけていた。
お婆さんのほうは声が小さいからなんと言っているかは聞こえてこないので、ひたすらに息子が怒鳴り上げているのを、隣で私が聞いているというようなことになっていた。

さてそのお婆さんは本当に可哀想で、いつも心苦しく思っているのだが、それとは別に、皮肉な結果を生んでいるなと思うことがある。

それは、そのお婆さんと顔を合わせた時、そういう一部始終を聞いていることもあって可哀想だと思うところもあり、声をかけて話をしたりすることがあるのだが、その時言っていたのだが、なんでもその息子夫婦は、お婆さんの世話を一切しないそうだ。
自分のことは自分で全てやる。
掃除もご飯の用意も、自分の範囲のことは全部。

これは、息子夫婦の悪意であると思うのだが、しかし、その悪意が、逆にこのお婆さんに、生き続ける力を与えているなと思うのである。

先日の記事で父親が引退に際して生きる気力を失いかけた話を書いたが、それとは逆で、このお婆さんは、どんなに歳になっても、誰も自分の身の回りの世話をしてくれないことにより、いつまでもせっせと生きる作業を自分でするようになり、それは結果的には、ものすごく健康に良いということになっていると感じるのである。

もう87歳だと冒頭に書いたが、腰は曲がっているし耳は遠くなっているが、いつも何かしら動き回って、たまに近所の友達と縁側で話し込んだり、飄々と元気にやっている。
息子夫婦たちからしたら、早く逝ってくれないだろうかという一心なのだろう。
いつまで生きるんだと。

しかしこの婆さんは、まだまだ当分長生きしそうである。

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