2017年8月19日土曜日

小規模企業共済とは?個人事業主にとって節税になる?

会社員にとって退職金があるように、フリーランスの個人事業主にも、仕事が続けられなくなったなど、将来に備えた積立金制度がある。

小規模企業共済とは


小規模企業共済とは、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する、小規模企業の個人事業主が事業を廃止した場合や、会社等の役員が役員を退職した場合等に、それまで積み立てた掛金に応じて共済金を受け取れる共済制度である。
「退職後の生活の安定や事業の再建を図ることを目的とした資金」を準備するため、退職金の無い小規模事業者から少しでも将来の不安を取り除くため、国がつくった”経営者の退職金制度”と言える。

昭和40年に発足し、在籍件数は約170万件。
過去3年は加入件数が増加傾向。

小規模企業共済に満期や満額という取り決めは無く、事業を廃止した時、法人を解散した時、共同経営者を退任した時などに受け取れる共済制度である。

小規模企業共済の加入資格


小規模企業共済の加入資格は、常時使用する従業員が20人(商業とサービス業(宿泊業、娯楽業を除く)では5人)以下の個人事業主やその経営に携わる共同経営者、会社等の役員、一定規模以下の企業組合、協業組合、農事組合法人の役員であること。

ちなみに、共同経営者の条件を満たす人が居る場合、その共同経営者の小規模企業共済への加入の有無に関わらず「2人まで」従業員数から引くことができる。

法人として加入することはできず、個人事業主、法人の役員や共同経営者個人として加入すること、また中小企業退職金共済および特定業種退職金共済(中退共等)の被共済者は、重複して契約することはできない。
共同経営者として加入する。共同経営者とは?
以下の条件を全て満たすと、共同経営者として加入することができる。

・従事する事業の個人事業主が小規模企業者であること。
・事業の重要な業務執行の決定に関与していること、または、事業に必要な資金を負担していること。
・業務執行に対する報酬を受けていること。

*「事業の重要な業務執行の決定に関与している」とは、次のうち1つ以上について意思決定に参画していること。

・経営計画の作成、経営方針の決定
・事業の開業および廃業
・営業所・支店等の開設および廃止
・事業に必要な資金の借入れまたは投資
・損益の分配、報酬規程
・人員の採用 など

*小規模企業共済に加入できる共同経営者は、個人事業主1人につき2人まで。

掛金月額はいくら?節税ができる?


掛金月額は、1,000円から7万円までの範囲内で500円単位で自分で自由に決められ、途中での増額、減額も自由である。
掛金は前納でき、前納すると一定割合の前納減額金があるので、まとまった金額がある場合は前納するとお得だろう。

また、自分で貯金するように退職金代わりに積み立てる仕組みだが、その掛金は、確定申告書の「小規模企業共済等掛金控除」の欄に記入し、中小機構の発行する証明書を添付して提出することで、全額を”小規模企業共済等掛金控除”として、課税対象となる所得から控除できる。

つまり最大に年で84万円(7万×12ヶ月)の控除を余計に受けられることになる。
ゆえに、同じ金額を所得から自前の口座に老後のためにと貯金として積み立てるよりも、節税ができる点で有利である。
また、下で共済金の算出について詳しく触れるが、普通預金の利子などより明らかに有利な利率が受け取れる。

共済金はどれくらい受け取れる?共済金の算定方法


共済金の算定方法は以下の式で求められる。

【共済金等の額 = 基本共済金付加共済金

実に単純な二階建て方式だが、実際計算するとなると毎年度設定される利率や、受け取る”共済金の種類”などによってそれぞれ違った計算がなされることになる。

まずその共済金の種類であるが、共済金は受け取る時の状況(請求事由)に応じて、4種類に分けられる。

『共済金A』・・・個人事業を廃業した場合や共済契約者が亡くなった場合、全額金銭出資により個人事業を法人成りした場合などに受け取れる共済金

『共済金B』・・・65歳以上で180ヶ月以上掛金を払い込んだ場合に受け取れる共済金(老齢給付)

『準共済金』・・・個人事業を法人成りして、その法人の役員にならなかった場合などに受け取れる共済金

『解約手当金』・・・任意解約や機構解約(掛金を12ヶ月以上滞納した場合)、個人事業を法人成りして、その法人の役員になった場合などに受け取れる共済金

*さらに詳しくは中小機構:共済金(解約手当金)について参照

注意としては、掛金納付月数が6ヶ月未満の場合は、共済金A、共済金Bに当てはまっても受け取れない。
また、12ヶ月未満の場合は、準共済金、解約手当金に当てはまっても受け取れないことになっている。
例えば10ヶ月目に事業を廃業した場合、共済金Aに区分される計算方法で算定された額の共済金は受け取れるが、同じく10ヶ月目に個人事業を法人成りして、その法人の役員になった場合は、解約手当金の条件に当てはまっても解約手当金は受け取れないということになる。
基本共済金の額
(例)掛金月額1万円で、平成16年4月以降に加入した場合

掛金納付月数掛金残高共済金A共済金B準共済金
5年600,000円621,400円614,600円600,000円
10年1,200,000円1,290,600円1,260,800円1,200,000円
15年1,800,000円2,011,000円1,940,400円1,800,000円
20年2,400,000円2,786,400円2,658,800円2,419,500円
30年3,600,000円4,348,000円4,211,800円3,832,740円

ざっと見てわかる通り、共済金Aとして受け取るのが、最も利率が良い。

また、上の表には無い解約手当金については、掛金納付月数に応じて、掛金合計額の80%~120%相当額が受け取れることになっているが、掛金納付月数が、240ヶ月(20年)未満の場合は、掛金合計額を下回る。
具体的には下の表の通りである。(平成16年4月以降)

掛金納付月数支給割合
12ヶ月以上 84ヶ月未満80.00%
84ヶ月以上 90ヶ月未満80.50%
90ヶ月以上 96ヶ月未満81.25%
(以下6ヶ月ごとに0.75ポイントずつ割合が増加)
240ヶ月以上 246ヶ月未満100.00%
(以下6ヶ月ごとに0.25ポイントずつ割合が増加)
720ヶ月(60年)120%(上限)

*何年度に納付した掛金かによって計算方式が違うので、詳しくは中小機構:解約手当金の額の算定方法を参照してください。
付加共済金の額
では付加共済金である。
付加共済金とは、毎年度の運用収入などに応じて、経済産業大臣が定める率により算定される金額である。
であるから、運用収入が高くなければ、この利率は0となる。
ちなみに過去三年間の付加共済金の支給率は、軒並み0であるということからしても、今後も0という数字が並ぶことが予想されるので、期待はしないほうが良いと思われる。

故に詳しい算定方法などを勉強する意義は、今の所見当たらないので省略する。
詳しく知りたい方は中小機構:共済金の額の算定方法を参照してください。

また、受け取る共済金は、税法上、一括で受け取る場合は「退職所得扱い」、分割で受け取る場合は「公的年金等の雑所得扱い」などとそれぞれ取り扱われ、普通の所得よりも有利な所定の控除が受けられ、算出された税金を差し引いた額が支給される。

気をつけるべき点は、積立金を自由に引き出せない点で、廃業など以外の任意解約などで共済金を請求してしまうと、受け取れる共済金額は目減りしてしまう。

この小規模企業共済において、掛金の元本割れが起こるシチュエーションをまとめておくと以下の三つである。

1.納付月数が6ヶ月未満で請求事由(廃業等)が発生した場合。
2.納付月数が12ヶ月未満で準共済金の請求事由が発生した場合。
3.納付月数が20年未満で解約手当金の請求事由が発生した場合。

これ以外のシチュエーションでは、元本割れが起こる可能性は無い。
小規模企業共済は、長期間納付し、任意解約しない展望があれば、ほぼ安全でメリットの高い制度と言える。
しかし短期的な展望のみで、当面の節税に利用したいという程度で加入してしまうと、後々損を被る可能性も高いことは注意しておきたい。

前納すると減額される前納減額金はどれくらい?


前納減額金は、合計額が5,000円以上になった場合に、その年の6月に支払われる。
その前納減額金は次の式で求められる。

【前納減額金=掛金月額×0.9÷1,000×前納月数の累計】

例えば掛金を年払いにしている人は、毎年1ヶ月分の掛金と11ヶ月分の前納掛金を納めていることになる。
仮に7万円の掛金月額を納めているならば、【前納減額金=70,000×0.9÷1,000×11】つまり年に693円の前納減額金が発生し、7〜8年に一度、その年の6月に5,000円のキャッシュバックが受けられるということになる。

契約者貸付制度について


小規模企業共済契約者は、その納付した掛金の範囲内で、経営状況が厳しい場合の事業資金や、小規模企業共済契約者や親族の福祉向上のために必要な住宅改造資金、福祉機器購入等の資金の貸付けを受けられる制度がある。
他にも様々な状況に応じて貸付けが受けられるので、詳しくは中小機構:契約者貸付制度についてを参照のこと。

転業したり廃業の後新たに創業したりした場合の掛金納付月数の通算


転業や廃業等により、共済金の請求事由が発生しても、一定の条件を満たしていれば、共済金等の支給を受けず、1年以内に小規模企業共済加入条件を再び満たして所定の手続きを行えば、掛金納付月数を通算して共済契約を続けることができる。
その掛金納付月数の通算には、共済契約者自身が共済契約を継続する「同一人通算」と、共済契約者の配偶者または子が共済契約を引き継ぐ「承継通算」がある。

掛金納付月数の通算ができる条件や手続きは、中小機構:掛金納付月数の通算を参照してください。

加入手続き

加入に必要な書類等を揃える
1.必要書類

・契約申込書
・預金口座振替申出書

【申込書の受取方法】
・共済相談室に電話して取り寄せる(050-5541-7171)平日午前9時〜午後6時
・中小機構資料発送センターに請求票をFAXする(042-590-7778)
小規模企業共済資料請求票(PDF:149KB)
小規模企業共済資料請求票(Excel:58KB)
・インターネットから資料請求フォームを記入する場合はこちらから
・中小機構の業務を取り扱っている窓口で直接手続きする場合はこちらの委託機関から

2.提示書類

個人事業主の場合

・所得税の確定申告書の控え(確定申告書がない場合は開業届の控え)

*確定申告書の控えには、税務署の受付印が必要だが、e-Taxで申告したために税務署の受付印がない場合、確定申告書の控えと一緒に「メール詳細」を提示すれば受付印に代えることができる。
「メール詳細」は、e-Taxのページの中段・中央辺りにある「メッセージボックスの確認」から取得できる。

法人役員の場合

・商業登記簿謄本など

共同経営者の場合

・個人事業主の所得税の確定申告書の控えと個人事業主から報酬を得ていることが確認できる書類
・個人事業主と締結した共同経営契約書の写し(共同経営契約書で確認できない場合、金銭消費貸借契約書の写し、出資契約書の写しなどで確認)
・報酬の支払い事実が確認できる書類(社会保険の標準報酬月額通知、青色申告決算書、白色申告決算書および賃金台帳、国民健康保険税・介護保険料簡易申告書等)

3.現金(「現金あり」で申込みをする場合のみ)

月払いの場合

・1ヶ月分の掛金(前納したい場合は前納掛金も)

半年払い・年払いの場合

・それぞれの月数の掛金分の金額
書類に記入する
本契約書記入例(PDF:996KB)

共同経営契約書作成サンプル(PDF:143KB)

*共同経営契約書は、個人事業主と共同経営者が私的に結ぶ契約書であるため、決まった様式はありません。

契約申込書への記入間違いをした場合
『契約申込書』の記入を間違えた場合、捨印があれば、間違えたところを二重線で消し、正しい内容を余白部分に記入してください。なお、金額を間違えた場合は、捨印ではなく訂正する箇所に訂正印を押してください。
加入の申込み
中小機構の業務を取り扱っている委託機関の窓口で手続きをする。

金融機関での申込みで、その金融機関に振替口座がある場合

・契約申込書、現金(「現金あり」で申込みをする場合のみ)、提示書類を金融機関の窓口に提出する。

委託機関での申込みや、申込金融機関と振替口座のある金融機関が別の場合

1.振替口座のある金融機関で契約申込書を提出し、契約申込書の右側の預金口座振替申出書に取扱店口座確認印をもらう。

2.加入申込窓口で、契約申込書、現金(「現金あり」で申込みをする場合のみ)、提示書類を提出する。

*現金を払い込んだ時渡される領収書は、確定申告・年末調整で所得から控除するときに添付を求められることがあるので大切に保管しておく。

*掛金の振込みに使用する口座は、中小機構の業務を取り扱っている金融機関の口座のみ指定可能で、必ず共済契約申込者本人の個人名義のものを使用すること。
屋号付きの個人名義、法人名義、他人名義の口座を指定することはできない。
中小機構への書類等送付・審査期間
委託機関や金融機関で上記加入の申込み手続きが完了すれば、提出した書類と、預けた現金がある場合は現金を機関が確認し、中小企業に送付します。
その後中小機構により約40日間ほどの審査期間があり、全ての手続きが滞りなく完了すれば、中小機構から「共済手帳」と「加入者のしおり及び約款」が送られて来る。

加入・節税シミュレーション


小規模企業共済制度・加入シミュレーションをしてみる

上記の情報をまとめて、小規模企業共済を最も利率の良い形で利用するには次のような条件を満たせば良いことになる。

1.掛金を前納で収める。
2.確定申告で確実に小規模企業共済で納めた額を申告する。
3.受け取る際は「共済金A」に当てはまる請求事由で共済金を受け取る。(一括で受け取るか分割で受け取るかなどでかかる税金が税法上変わる関係で、どちらの受取方法がより節税になるか気になる方は、その際に金額や期間を合わせて検討してください。)

以上、小規模企業共済についての情報をまとめてみた。
節税しながらもしもの時のための貯蓄ができる、これは個人事業主にとってメリットの多い制度であると言って良いだろう。
私もフリーランスとなって3ヶ月ほどが経った。
今後できるだけ速やかにこの小規模企業共済には加入したいと思っているところだ。

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